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千年の翠(せんねんのみどり)

花水木の花も終わりを迎え、豊かな緑に囲まれる季節になりました。
7月9日から開催の横須賀美術館での展覧会に向けて、
すでに作品集荷の準備が進んでいます。

展覧会のサブタイトルも決まりました。
私の思いつきで「千年の翠(せんねんのみどり)」と致しました。
これはもともと「松樹千年翠」という禅語があって、そこから拝借したものです。
「松の木は季節折々に、次第に変化しながらも、千年以上変わることなく、松は松のままである」
という、全く当たりまえのことを言っている言葉です。

「千年」が、ちょっと身に余る大袈裟な言葉で、お恥ずかしいのですが(笑)
それを目指しているという意味で使わせてもらうことにしました。

展覧会では、1998年の作品から今年の最新作までをご紹介しながら、
作品がスクラッチやハッチング、そして油彩へと次第に変化しながらも、
それでも変わらずに川田作品になっているものは一体何か?をご覧頂く展示内容となる予定です。

これまでの制作活動を振り返るに、
ここに至まで様々な思い込みにしばし陥ることがありました。
それでも、その呪縛に気づくことでその都度、
自分なりに克服しながら制作活動を進めて来れたように感じています。

呪縛というのは、例えば何気なく発せられた一言であったように思います。
「今時、絵なんか発表しても何にもならないよ」が最たるものです。
度々、そうかなと思ってどれ程不安になったことでしょう。
しかし、よくこの言葉を突き詰めて行くと、
誰もその事実を正しいと証明することはできないのです。
もっと厳密に言えば、それは正しくもあり、また正しくないともどちらとも言えることなのです。
つまり「何にもならない」と思い込めば、それが正しくなり、
「何とかなる」と思い込めば、そうなるように出来るだけのことだったのです。
今この時点で、その言葉を振り返ると、
その言葉の呪縛をよく克服することができたなと実感している自分があります。

このことが教えてくれることは、自分の可能性は、
大抵が自分自身の何気ない思い込みで、
自ら潰してしまっているということです。
この言葉に屈服し、そうだと強く思い込んでいたら、
今の私は存在出来なかったことでしょう。

これは制作のことにしても同じです。
スクラッチは硬い画面でないと出来ないという強い思い込みがかつてあって、
長らくキャンバスにスクラッチをするという発想に思い至らない時がありました。
それはどうしてもそうしなければならないという必然と、
実行する意志力というのが起きて来て、克服することが出来たのでした。
硬いボードに描いた作品は、キャンバスよりも重くて搬送にとても負担があったのです。
遠い場所に作品を送るためには、どうしても軽いキャンバスにする必要があったのです。

そして、そもそもスクラッチこそが、
「ハッチングの細い線が自分には描けない」という思い込みから生まれた技法でした。
でも長年ハッチングをするようになった頃には、
なぜあのような思い込みに陥っていたのか不思議に思うくらいになっていました。
それでも「どうしても細い線を描きたい」という情熱で、何とかしてしまったのです。

でもさすがに、それらの技法を自由に使えることが、まさか自分の自由を拘束するとは、
考えてもみなかったことでした。
スクラッチもハッチングという技法に執着しそうになっていた自分に、
はっと気付く瞬間がありました。
自分が自分を自由にさせなければ、
きっと見る人にとっての自由も束縛してしまうことになる、と。

「天才とは、自分が陥った環境から自身を自由にし、それを乗り越えていく者のことです。」
(J・クリシュナムルティ『白い炎』)

私は、天才ではないので、なかなか自分を自由にはできないし、
自由にしてしまうと、どちらかというと紙一重の方の人となってしまい、
誤解されやすいところもあるのかもしれませんけど(苦笑)

それにしても、自分がそれらを手放して、油彩画を描くとは思いもよらないことでしたが、
今となってみれば、何で素直に油彩画で表現しなかったのか、不思議に思う程です。

このような沢山の思い込みは、大体が生活上の窮地に至った時と同時に発生し、
はっと気づくようなことで克服しながら、自分も制作も前に進むというような具合です。

ですから、何か問題が起きた時は、大きなチャンス到来です。

今年はそういう意味で私にとって、とても大きな飛躍が期待出来る当たり年かも知れません。
まだまだ、沢山の思い込みを手放すことが出来ていないことに気付くことが出来たからです。

おそらく、時代の思い込みをいち早く克服する制作こそが、
芸術作品として後世に残されていくものではないかと考えるようになって来ました。
つまり見た目に素晴らしい美術作品を制作することが目的ではなく、
この時代の人々の思い込みを克服するような制作が残せたら、と思うのです。
それがたったの1枚の作品に集約出来たら、どんなに素晴らしいことでしょう。

まだまだ私などは未熟なので、これまでの作品を並べて、
何とかそういうことをお伝えするのが精一杯な状態です。

何はともあれ、これまで制作活動を続けられて来れたのも、
一重に沢山の方々のお力添えのお陰さまです。
これらのご支援とともに歩んで来れた制作を発表出来る喜びに包まれながら、
新作制作に朝から晩まで、画業精進している毎日です。

昨年末の個展で得た資金も新作制作に使い果たし、生活費も底をついてしまいました。
明日から、どのように生き延びるか、またサバイバルな毎日が始まりました。
ここを乗り越えるべく、皆様のご支援、ご協力をどうぞ、よろしくお願い致します。

作品ご購入でのご支援のお願い
KANEKO ART TOKYOにて販売
〒101-0032 東京都千代田区岩本町2-6-12 曙ビル1F
TEL : 03-6240-9774
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新作
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ハッチング・シリーズ

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