『塞翁が馬』という話しがあります。ご存知ですか?
中国の古い話しです。
中国の北方の塞に、占いの得意な老人が住んでいたそうです。
ある時、その老人の馬が北の胡の国の方角に逃げていってしまいました。
この辺の北の地方の馬は良い馬が多く、高く売れるので近所の人々は気の毒がって塞翁をなぐさめに行きました。
ところが残念がっている様子もなくこう言いました。
「このことが幸になるだろう。」
そしてしばらく経ったある日、逃げ出した馬が胡の良い馬をたくさんつれて帰ってきました。 そこで近所の人たちがお祝いを言いに行くと、首を振ってこう言いました。
「このことが災いになるだろう。」
しばらくすると、塞翁の息子がその馬から落ちて足の骨を折ってしまいました。 近所の人たちがかわいそうに思ってなぐさめに行くと、平然とこう言いました。
「このことが幸となるだろう。」
1年後、隣国との戦乱が起こり、若者達たちはほとんど戦死しましたが、塞翁の息子は足を骨折していたので、戦いに行かずに済み、無事でした。
この故事から、「幸(福・吉)」と思える事が、後に「不幸(禍・凶)」となることもあり、またその逆もあることのたとえとして「塞翁が馬」と言うようになったそうです。
作品を個展で発表して来て、これと同じような事を度々実感することがあります。
「以前の個展と比べて、今回の作品は...」皆さんそのように見て下さるわけですが、
必ず意見が二つに分かれます。
「以前よりも良くなった」
「以前の方が良かった」
お陰さまで「以前と全く同じですね」とはなりません。
変化し続けるからこそ、その変化に人が価値を与えたがります。そして、微妙な違いを簡単に言い表す表現力が不足しているために、とりあえず良いか悪いかを言っているように思えてなりません。その存在の意味を十分吟味出来る人は、かなりの美術作品を見て来た人です。
同じ会場で、全然真逆の意見を聞き、初期の頃は面食らったものです。
でもいろいろな画廊で転々として発表して来ましたので、そういうことにはすっかり慣れっ子です。
しかしその都度そこの画廊のオーナーを、ヒヤヒヤさせてしまいます。
画廊側としては「今回は良くなった」と言ってもらいたいのが情というものです。
さて、良い、悪いを人は本当に判断出来るものでしょうか?
アートは、それを見る人にその難問を投げかけているのです。
「誰にとって、どういう良いなのか?」
これを深く掘り下げて行くことが大切です。
作り手は、ずっとこれを考えながら一生を捧げます。
そして結局、普遍的な「特別な誰かではなく、しかし誰にとっても」と答えを出すことになるのです。
そしてその誰とは例えば昔は「神」と名づけたのかもしれません。
現代的には「人類にとって」ということになるのでしょう。
そのような視点に立って判断出来る人が、この世に何人居るでしょう。
ゴッホしかり、ベートーヴェンしかりです。
その答えは、歴史が語るように、『塞翁が馬』のごとくです。
人がまともに判断出来た事などあったでしょうか?
誰がベートーヴェンの第9を、大晦日や新年に、世界中で演奏され続けると想像出来たでしょう。
ゴッホの『ひまわり』を、日本人が36億円で落札すると誰が想像出来たでしょう?
落札者は、ゴッホの生きていた時代にさかのぼったとして、誰の意見も聞かずに、自分の目を信じて同じ作品を買えたでしょうか?
作品は、その時と何も変化していないのです。
そして当時それが、いかに安価に手に入ったか知れない...、にもかかわらずです。
つくり手達は、全くの不幸のどん底で,その栄光など想像することなく死んでいます。
芸術の世界とは、相も変わらずその繰り返しです。
芸術家たる者は、人の下す評価などに左右されることなく、自分を信じて我が道を突き進むしかありません。
そのようにして残されたものが、後世の人々に勇気と希望と感動を与えるのだと思います。
*新作販売のご紹介*
白銀の雲
2012
ハッチング/スクラッチ
アクリルガッシュ/キャンバス
45.5X53cm
SOLD OUT
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第1回損保ジャパン美術賞展
2013年2月23日(土)-3月31日(日)
休 館 日 月曜日
開館時間 午前10時-午後6時
観 覧 料 一般500円
新作『雲のアルペジオ』162x194cm出品
*透明感や動きが出て来た自信作です。是非実物をご高覧下さい。
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追伸:
新しくリニューアルして、アートプリント作品の限定販売を再開しました。
お陰さまで、すでにご注文を頂いています。
アートを広く普及して行く活動に、力を頂きました。
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