川田 祐子 展 -TRANSFORMATION 変容-
2010年1/11(月・祝)~1/30(土)日曜休廊
12:00~19:00 (最終日~18:00)
KANEKO ART TOKYO
〒103-0004 中央区東日本橋1-7-6 メリットビル 1F
Tel 03-6240-9774
出品作品について
これまで15年程続けて来た制作は、アクリル絵具の瞬間乾燥によって可能となる「重層の強固さ」「色の深さ」を実現する物質性と、生活の大半の時間を注ぎ込むスクラッチとハッチングという技法の細い線の束が生み出す空間性によって成立しているものです。物質感は、印刷に載せると、その大半の魅力が失われ、細かいタッチのスクラッチとハッチングは、大きい作品になると、ほとんどの人が作品と距離を置いて見ようとするため、見知することが不可能でした。
「全ては見えないけれど、感じられるもの」としてありました。
そのような制作に、しばし求められたのが、接写撮影の写真でした。ワークショップでは、拡大鏡で作品を覗いてもらったこともあります。細かいタッチがどのように出来ているかを知った人たちは、口を揃えて、接写画像を作品の脇に掲示する必要性があると言ったものでした。
また、スクラッチの作品を見た版画家のほとんどが、これを版画にしてみたらどうかと薦めました。10年前から、リトグラフやエッチングの工房からお誘いがあり、何度も心が揺れました。しかし、私は線の束が作り出していく色によって導かれる制作の意味を常に問い、ただ単にやみくもにどこの場所にも線が描きたいというものではないのです。
これまでに300点以上を制作しましたが、小品の全ては、生きるために手放しました。作品は個展中に撮影し、資料として必ず画像として手元に残すようにして来ました。私の作品は、エスキースがなく、形も漠然としているので、作り終わると自分自身ですら、どのようにつくったか忘れてしまい、記憶に形が残らないからです。ですから、たまにパソコン上で、残された画像を見ながら頭を整理し、次の制作の構想を立てたり、プリントアウトして資料ファイルを作成します。そういう習慣の中から、Photoshopで画像を操作する技術が自然に身に付きました。
以上のような流れの中で、必然として今回のセルフカバー・アートが生まれたのです。
この作品には、いくつかのタブーが含まれていて、その壁を越えることを何度もためらい、発表するまでに勇気と時間が必要でした。それは、『複製』と『機械仕事』という問題です。私のこれまでの制作の魅力は、この世に1点しかないということと、時間や手をかけたことの重みにありました。「そこから一度離れてみる」ことで、私の作品をより強固にする、本当に大切なことが見えて来ることがあるはずだ、と踏み切ったのです。ーーーそのひとつが、「作品を多くの人と生活の中で共有することができる」という点です。
今回の制作には、『写真』『版画』『印刷』『グラフィック』という美術を生活の中で活用する技術を含んでおり、これまでの制作が生の表現であるとしたら、これらの技術を使うフィニッシュワークと言えます。これには、また別の技能が求められるため、たいていオリジナルの制作とは別の人が関わって、最終的につくられて来るという慣例があります。しかし、私の場合は、オリジナル制作、画像撮影、デジタル現像、画像加工、プリント出力まで、全て自身のアトリエに機材設備を持って自前でカバー(=セルフカバー)することで、この技術でしか実現出来ないオリジナルな手法を探る、作家制作として成立させることにしました。そこが最も重要な部分であり、そのことで今回のKANEKO ART TOKYOでの個展の実現となりました。
これまで頑なに打ち立てて来た壁も取り外され、生の制作にも新しい風が入るものとして、この変容と誕生を温かい目で見守り、新たな目で楽しんで頂ければ幸いです。 (かわだ ゆうこ)
*ご案内
個展出品と同じ作品を、南橋本の三菱地所、MID OASIS TOWERS マンションギャラリーでも現在ご覧になれます。こちらの展示は、実際の生活の中でアートを楽しむ展示のご提案です。お近くの方は、是非お立寄り下さい。
営業時間:10:00~18:00(火・水曜日定休)
お問い合わせ:0120-108-863
アクセス:http://www.hashimoto705.com/access.html
また、sister-shipのネット上でも同時販売中です。出品作品のほとんどをネット上でもご覧になれます。
尚、今回 KANEKO ART TOKYOの個展のためだけに制作したスペシャル作品が4点あります。こちらは、KANEKO ART TOKYOのみの展示販売です。