長らく眠っていた作品『氷結の晶』をご紹介致します。
この作品の元になった素描は、1996年11月に横浜大気堂画廊の個展で発表しました(下画像)。当時の作品はF0号のパネルに水貼りした画材紙の上にボールペンを使用したドローイングでした。その5年後の2001年11月に、本の装丁デザインを手がけるfragmentという会社から直接依頼があり、この作品が装画として使われることになりました。
横浜大気堂画廊 1996年 個展展示風景
向かって左側の壁に『氷結の晶』が展示されています。
『天皇と王権を考える』という本のタイトルに、担当デザイナーの柳川貴代氏はとても悩まれたようです。そこで、西瓜糖の個展で見られた私の作品を思い出し、白羽の矢が当たったのでした。「イメージがはっきりしていないのが返って好都合」そして「どのタイトルにもなぜかしっくりハマってしまうのが不思議」というお話しでした。最初はそのままドローイングが使われる予定でしたが、私としては、より精密に描いた本画を掲載したいと申し出て、2002年の4月から毎月発刊に合わせて楽しみながら10ヶ月かけて1点1点制作しました。
縦方向のハッチングのみの技法で統一した作風は、あまり多くは制作していない、今となっては珍しいものです。アクリルガッシュでハッチングする技法が結実した、重要な作品シリーズです。
サイズ:18x14cm
技法:縦のハッチング
材質:アクリルガッシュ・キャンバスボード
制作年:2002-3(下絵1996)
*左側画像は岩波の全集の表紙です。
『岩波講座 天皇と王権を考える』
日本国家のあり方が根源的に問われている今,天皇制への問いは避けて通ることができない.本講座は,天皇を広く世界史的連関のもとに置き,多角的な考察と問題提起をめざす,初めての試みである.今日の政治構造や学問枠組みの変動を踏まえた新鮮な視点をもって,天皇と王権をめぐる問題状況を可視化し,人類社会の根源的問いに挑む.
装丁デザイン fragment 柳川 貴代 氏
作品は1枚1枚個別に、タトウに入れてあります。今回公開に合わせて、手縫いで自作しました。私のキャンバス作品で使用している、フナオカ製膠塗り生キャンバスの裁ち落としを活用したものです。10枚セットの場合は専用の桐箱に入れて販売されます。