明日から、長野県信濃美術館「やねうら美術館講座」でワークショップ『あなただけの思い出から、みんなのこころのふるさとをつくろう』が始まります。
2002年の静岡県立美術館でのワークショップからもう10年。2005年に横浜市民ギャラリー、2007年相模原市民ギャラリー、2009年水戸芸術館現代美術センターに続き、5回目となる今回のテーマは、「心のふるさ」とです。
私にはいわゆる故郷というような場所が存在しません。生まれた場所や育った場所に、私を待つ家はもうないのです。そのかわりに、私にとって「絵画」が「ふるさと」と言えるかもしれません。
これまでに国内外で沢山の絵を直接見て歩いて来ましたが、「いいなぁ」と思う作品は、「なるほど」というような理屈で説得して来るような作品ではありませんでした。むしろなぜ「いいなぁ」と感じるのか言葉にすることが出来なかったり、ためらわれたりするものです。でもこれだけははっきり言えるのですが、出会ったその日から、自分自身の「心のふるさと」となるような作品、と言うことが出来るのです。何度も思い返しては帰って行くような、そういう絵です。
絵画が本当に素晴らしいと思うのは、自分の故郷でもないのに、「懐かしいような」気持ちになることです。そのような作品の一つが、私にとって東山魁夷作品です。
なぜそのような気持ちにさせられるのか、長野に越して来て、東山魁夷館に何度も足を運びながら、ずっと考えて来ました。そこから学んだ事が、今回のワークショップの基盤になっています。
「えっ?東山魁夷?」と驚かれるでしょうか?
「川田作品は現代美術ではないのではないか」と、指摘されることがあります。最近は面倒になって、「そうかもしれません」。と居直るようになりました(苦笑)。
私は、いわゆる「現代美術」というカテゴリーをつくるために作品制作をするタイプの作家、ではありません。大半の「現代美術作家」が、「いかにも現代美術らしい現代美術」を見せることに終始しているように思えて、何か違うような気がしてならないのです。
カテゴリーは、時代が変わればすぐに使い古され、大衆は瞬く間に、より新しいカテゴリーに移ってしまいます。しかし、「心のふるさと」は誰もが、昔も今も国の違いなど関係なく求め続けるものでしょう。
そもそも大半の人々にとっては「現代美術」という枠組みなど、どうでもよいのではないでしょうか。
そして、今「現代美術」とされるものの周りに集まっている人も、時代が過ぎれば、また次の新しい「現代美術」へと群がり、今新しいものでも、「古くなった」と言われるようになる時が必ず来るのです。
そして現代美術に限らず、ブランドものでも何でも共通して「誰もが知っているようなものには関心がない」、あるいは「ミーハーなのはちょっと恥ずかしい」というような感覚の人たちがいるものです。そういう人たちが、私の作品の周りに集まって来るように感じています。
「人は絵画に何を求めるか」を考える時に、そのひとつとして、「いつでも自分を迎え入れてくれる懐の深さ」と、私はとらえています。それを今回「心のふるさと」という言葉に置き換えてみました。
私にしてももう半世紀生きて来て、目新しいものばかりを追うような生き方をする段階ではありません。むしろ自分の作品の良さをより磨いて、どれだけ多くの人の「心のふるさと」となりうるような作品が制作出来るか、そのことが今後の課題です。
今朝ポール・サイモンの詩と動画をたまたま見つけました。
随分お年を召して...、しかし何て懐かしいようなメロディ。
年を重ねて愛される境地とは、こういうものだと教えてくれました。
家で待っているのが、好きな音楽と絵画もあれば、もっと私はうれしいです。
早く家へ帰りたい
僕は鉄道の駅に座っている
目的地までの切符は買った
スーツケースとギターを抱えて
一夜興行の旅の途中
どこへ行っても結構なお膳立て
詩人と一人バンドの組み合わせにふさわしく
家路・・・
これが
故郷へ帰る旅であってほしい
家 それは心の隠れ家
好きな音楽があり
愛する人が静かに僕を待つていてくれるところ
毎日が果てしない河のように
タバコと雑誌で過ぎてゆく
どの町も僕の目には同じ
映画館に工場
見知らぬ人々のどの顔を見ても
心に浮かぶ思いはひとつ
家路・・・
このまま
故郷へ帰ってしまいたい
家 そこはわずらわしい思いからのがれ
好きな音楽を奏で
愛する人がそっと静かに
僕を待っていてくれるところ
今夜も僕は持ち歌を武器に
堂々と詐欺を働くのさ
だがどの言葉も月並みな陰影となって
自分に帰ってくる
ハーモニーに宿る虚しさのように
僕には慰めてくれる誰かが必要なんだ
家路・・・
ああこのまま
家に帰れたらどんなにいいことか
家 それは心の隠れ家
好きな音楽があり
愛する人が
ひっそりと僕を待っていてくれる
追伸:
公式サイトのメールフォームを使って13年前に、銀座で知り合ったイギリス人の画家から10年ぶりの便りをもらいました。まだ彼も絵を描き続けています。当時彼は日本で個展をしたいと歩き回って画廊を探していました。気軽に相談に乗ってしまい、銀座、表参道、吉祥寺などなど、あちこち画廊巡りに付き合ったものでした。まだ忘れずにいてくれたらしいです。国際交流など、とても流暢に充分出来るような余裕も能力も無いままですが、嬉しい便りをもらい、爽やかな朝を迎えることが出来ました。
彼の公式サイトのリンクを貼っておきます。
Mike England
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*「画家川田祐子 芸術支援寄付」プロジェクト収入の経過報告34*
11月10日~11月21日
応援寄付 0名様 0口 0円
賛同寄付 1名様 2口 20,000円
小計 20,000円
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2014年目的達成まで あと 2,321,399円
*お陰さまで、アトリエ兼住まいの契約更新費を、このご寄付で支払うことができました。
また引き続き来年1年間、長野で制作することが出来ます。ありがとうございました!