朝は、アトリエの窓から、無花果の青い実りを眺めてはじまります。
昼間は、通り雨が多く、雨が過ぎた頃合いを見計らって、
瑞々しい草花の姿を探しに行きます。
夜は、秋の虫の音に囲まれて、筆が良く走ります。

めっきり、涼しくなって来ました。

今年になって始まった油彩画の制作が、とても快調です。

前回の個展の最終日で、油彩画とアクリル画の違いについて質問を頂きましたので、
このブログにも書いておくことに致します。

油彩画とアクリル画とでは、絵の具を溶く時に、
油を使うか、水を使うかの違いがまずあります。
そのため、乾き方の違いも出て来ます。
油彩画は、乾く時に酸素と結合するので、少し膨張するようにして固まります。
反面、アクリル画は水分を蒸発させて乾燥して固まりますから、
体積が少し減り、肉痩せします。
乾燥の速度は、最近はさまざまな画溶液が揃っていて、
どちらも遅くすることも早めることも自由自在になっています。

油絵具は、天然由来のリンシード油(亜麻仁油)やポピー油(けし油)
などで練ることで、強固な皮膜となってキャンバスに付着します。
アクリル画は、アクリルエマルジョン(合成樹脂)で既に練られた状態で販売されていて、
そのまま水を加えるだけで使えるようになっていますが、
光沢の調整のためにグロスメディウムやマットメディウム等の画溶液を使うことも出来ます。

絵具の強固さから言うと、実はアクリル絵具の方が、変化が少なく、
油絵具は油の種類によっては、油自体が黄変して行く性質があるので、
経年の内に徐々に色味が変わったり、
時には油と絵具の相性の問題で、
焼き物の貫入のような細かい亀裂が入る場合もあります。
強度では確かにアクリルは勝るのですが、
それが良いかどうかというと絵具の業界では、
最近少し価値観の違う考え方も出て来ています。

つまり、古色の面白さという意味では、
むしろ変化するのを楽しむという価値観もあるのです。
そういう場合、油絵具の魅力に軍配が上がります。
しかし今は、それぞれの価値観が重要視される時代ですので、
どちらがより優れているというわけではありません。
魅力の違いがそれぞれ違うのです。

私の制作の場合を喩えて言うならば、アクリル画と油彩画の違いは、
カットグラスと宝石の違いです。
ガラスそのものに価値は特にないのですが、
人間が創出した技術で魅力的に造形するのが、
切り子細工やボヘミアングラスのようなカットグラスならば、
石そのものに希少価値があり、たとえ原石でも売り物になるのが、
ダイヤやサファイヤ等の宝石です。
実際、絵具そのものは、鉱物由来のものが多く、
それを細かく粉砕して油で練ったものなのです。
(しかし現在の多くの顔料がエコの問題で人工顔料におきかえられつつあります)
絵具の研究をすればする程、絵具そのものの美しさに酔いしれてばかりもいられないのが実情です。
どのような画材を使うにしろ、結局は使う人間の気持ちのさじ加減で、
良くも悪くもなってしまうと言えましょう。

絵具についての研究資料として下記の書籍を参考にしています。
マックスデルナー 絵画技術体系 ハンス・ゲルトミュラー改訂
新装版 絵画材料事典
ジャン・リュデル著『絵画の技法
絵具の科学
画材の博物誌
よくわかる 今の絵画材料

絵具の研究を進めながら、
アクリル画は、技術で見せる。
油彩画は、画材そのものを活かして見せる。
というような方針が見えて来ました。

本日画廊KANEKO ART TOKYOから、新作展示の画像4枚が送られて来ましたので、
ご紹介致します。
お近くにご用事の際は、是非お立ち寄り下さい。
現在「ニルス・ウド展」開催中です。

kaneko20150908-1

向かって
右上:雨上がる 2015 oil on canvas 45.4×15.8cm ¥200,000-
右下:Shadow and Reality 2015 oil on canvas with rabbit glue 27.3x22cm ¥140,000-

kaneko20150908-2

向かって
左上:Moment 2015 oil on canvas 41×31.8cm ¥230,000-
左下:Whiteout 2015 oil on canvas with rabbit glue 45.5×45.5cm ¥300,000-
右上:Soul Flower 2015 oil on canvas 45.5×38.0cm ¥270,000-

(*canvas with rabbit glueとは、生麻のキャンバスに兎の膠が塗ってあるものです。
フナオカ社製の世界に誇る技術で生産されていた良質なキャンバスが、
現在とても手に入りにくくなっているため、希少価値のあるキャンバスです。)
kaneko20150908-3

お問い合わせ
KANEKO ART TOKYO
ニルス-ウド 展 開催中
ー Selected Photo Works ー
2015年9月8日(火) − 9月27日(日)
12:30〜19:00(土曜、日曜〜18:00) 月曜休廊

追伸
個展で作品をお買い上げ頂いた方々から、自宅に飾って下さったご感想や、画像などを、
ご丁寧なメールやお手紙で頂いております。

「偶然に出会ったのですが、ご覧のように、ずっと前からあるような気がします。」

「色合いも自然光と部屋の照明で、違いがありますが、どちらも、なじんで、いい雰囲気です。」

その他、購入した絵を友人に見せて、楽しんで下さった話し等々、とても心あたたまりました。
心から感謝しながら拝読し、新作展開への大きな励みとなっております。
ありがとうございます!