cloud arpeggio

雲のアルペジオ
2012
acrlylic gouashe on canvas
162x194cm
¥1,300,000-
お問い合わせ:KANEKO ART TOKYO

『雲のアルペジオ』は、損保ジャパン東郷青児美術館の第1回FACE展に応募した作品です。
ちょうど去年の今頃に完成していた作品でした。
この作品の題名を決めるために、毎日2〜3個思いつく言葉をノートに書き留めました。
制作して行く途中で、見えて来るものが変わって来るので、最後の最後まで決まりませんでした。
毎晩制作作業を終了すると、iPhoneで簡単に撮影し、寝床に入ってもその画像を見ながら眠りました。

最後の方で、宙に手が浮かんでいるように見えて来ました。
自分で描こうとしないのに、何かが見えて来ることは良くあることです。
そして描こうと思って描くものよりも、描こうとしないのに描けたものの方が、私はリアルに感じるので、
なるべくそういうものは、消さずにそっとしておきます。
『雲のアルペジオ』はそのようにして完成した作品でした。

そういうことから途中では、『雲をつかむ』という題名も考えてみました。

しかし、その手をずっと見ていると、ピアノなどの楽器を演奏しているようにも見えて来ましたので、
そこからアルペジオという言葉が浮上しました。

アルペジオとは、和音を構成する音を一音ずつ低いものから(または、高いものから)
順番に弾いていくことで、リズム感や深みを演出する演奏方法です。

私は、こういう音の表現を聞くと、一つ一つの音が細かいモザイクのように寄り集まって、
キラキラ煌めいているように感じます。
それは、空の雲を見ている時にも感じることで、
雲が細かく切れ切れに崩れて行き、まるでモザイクの様な秩序ある構成を見せていると、
頭の中にアルペジオの曲が聞こえて来て、とても心を奪われます。

このような雲を『鰯雲』『羊雲』『鱗雲』などと言うそうなのですが、
なんとなく生臭い感じのする名前がついているものですね。
学術的には、『絹(巻)積雲』。英語訳ではcirrocumulusと言われます。

この作品の制作段階では、それ程には『絹積雲』を意識していなかったので、無理に出さずに、
この後に続く『白い情熱』という作品へと繋げて行きました。

白い情熱
白い情熱
2012
ハッチング/スクラッチ
アクリルガッシュ/キャンバス
72.7X91cm
個人所蔵

『雲のアルペジオ』からは、次へと続く作品の展開が見えて行ったという意味で、
私にとって重要な作品になりました。

もう一つの展開は、次に紹介する『鳥は見ている』という作品に続きます。
それは描こうとしないで描けたものを生かすことであり、
これがダブルイメージという手法に繋がって行くことになります。
次回をお楽しみに。