スクラッチとハッチングの制作を動画でご紹介致します。

動画の最初にご紹介しているドライポイントリトグラフについて補足説明を書いておきます。

私は1998年に新横浜の版画工房に通い、ドライポイント技法で版にニードルを使って時間をかけて版を作りました。下絵無しで、版を重ねながら、二人の職人にその場で色を指示して、プレス機で刷り上げて出来たものが、私の『ドライポイント・リトグラフ』の作品です。4版多色刷りで、何回も納得がいく色が出るまで色を重ねましたので、インクの盛りが重厚である事に特徴があります。ドライポイントの線の繊細さと独特の立体的な線の趣を大切にしながらも、また線の重なり具合で、おぼろげに浮かび上がる線の向こう側の空間を出したい、その一心で版をつくり、色を決めました。

しかしとりわけ重要なのは、この制作を通して、「版そのものの美しさをそのまま作品にしたい」という思いが、スクラッチ作品をつくるきっかけになり、それが実って行ったことです。「線そのものに複雑な色を感じさせる」ために、アクリルガッシュの絵具層をあらかじめ板やキャンバス等の支持体に作っておき、ドライポイントと同じ手法を試みるようになりました。ニードルの代わりにカッターを使うことで、色を剥ぎ落とすことが可能になり、次第に絵具層を増やして、複雑な色のある線を作り出すようになったのです。その手法が吉祥寺のGallery Jinでの1999年の15mに連なるインスタレーション作品へと発展して行きました。

発表活動が忙しくなったことと、フランス製の高級版画紙アルシュや高級油性インクにお金がかかり、続かなくなり、ドライポイント・リトグラフの作品は、長らく工房の倉庫に眠っていましたが、アトリエが長野に移転する前に、奇跡的に私の手元に戻り、ようやく陽の目を浴びることになりました。

ドライピントリト

a mirror-k-the sky of seabed
紙サイズ:34×25.5cm
画サイズ:26x17cm
限定枚数:50
最高級版画用紙アルシュ
フランス製油性インク
エディションナンバー、題名、サイン付