今朝は4時に起き、長野から高速バスで上京しました。
途中群馬のあたりで台風の影響があったため、4時間かかりましたが、
新宿に着く頃には小雨となり、画廊に到着した時には、すっかり快晴となっていました。
今日から21日まで滞在し、20日(月曜日休廊)以外は、
開廊時間の12:30から閉廊時間まで個展会場に在廊する予定です。
今日もKANEKO ART TOKYO到着後、ほとんど息をつく暇もなく、
次々といらしたお客様と作品を前に会談する充実した1日となりました。 今回は、今までと全く違う側面を思い切って見せる作品になっていますので、
当初はさぞかし批判を受けることもあるだろうと覚悟していたのですが、
開いてみましたら、皆さん口を揃えて喜んで下さって、正直私はちょっと驚いています。
今日は、1998年頃からずっと作品を見て下さっているF氏と新しい作品展開のことや、
日本画のことなど今後の制作に刺激となるような深い対話が出来ました。
実は1998年の当初、氏から
「ずっと抽象画を描いていて行くと、同じような作品ばかり出てくるようになりませんか?」
と質問されたことがあって、その質問は今回の制作に少なからず影響を受けていることを正直にお話しました。
今回の具体的な表現に向かうきっかけは、氏の言葉だけでなくて、
ここまでに至る所々で、様々な人の口から発した一言一言が導きであったとまた言えるのです。
ある人は、「この手法で抽象ではなく具象を描くことも出来るわけですよね」と言いました。
またある別の人は「こういう難しい絵ではなくて、普通の花は描かないのですか?」
とごく普通の素朴な気持ちから尋ねられました。
様々なご意見が、直ぐには直接作品に反映されるわけではないのですが、
じっくり熟成されて、意識するでもなく、ある時自然にそれは出てくるもののようです。
そして、そう言えば、こんな意見があったなと思い返すような感じです。
ずっと長く絵を描き続けるということは、
ただ闇雲に1、2枚作品を描くというのとは全く違う能力が必要になります。
その能力とは、自分以外の様々な力を味方にする力です。
自分以外の中には、例えば、素材、時代、技術、人などをあげることが出来るでしょう。
自分の内面を知ることとは、実は矛盾しているようですが、
他力と向き合うことであり、思い込みを捨ててよく観察することです。
そして自分の本当に関心のあることが、外界に目立って見えるようになっている、
と思われてなりません。
それはあたかも偶然与えられているように見えて、
実は自分が外界の中に見つけ、既に選び取っているという意味で、
やはりそれは既に自分の意識の中にあることなのかもしれないのです。
ということは、実は自分の中にはもっと自分が気づかないような力が、
無限にあるのかもしれませんが、
私たちはほとんどそれを使うことなく一生を終えてしまうとも言えます。
これまでの制作に足りなかったことが、ここへ来て幾つか気づくようになりました。
そうしたことを、今までは気づいていても自分が向き合わないでいたり、
自分の歪んだ思い込みで間違って解釈していたのでした。
一つは、自分の作品スタイルを確立することが目的ではないということです。
むしろスタイルは次第に結果として見えて来るものであって、
それを目的に制作するのではないことに気づきました。
だから、次々と異なる手法やテーマに挑戦する意欲が出て来るようになりました。
二つ目は、作品の完成度を高めることが、必ずしも良いとは限らないことに気づいたことです。
完成された作品は、残念ながら途中経過がいくら良い描写あったとしても、
完成のためにそれらが打ち消されてしまうことがあるという事実があります。
人は、その途中経過を見たがっていることもあるかもしれない、
と思えるようになったのです。
たとえ未完成でも、そういうところを見せられる作品も制作するようになって来ました。
三つ目は、未完に関連して、具体的には、敢えて描かない部分があったり、
空白や自分が手を加えない素地を生かす部分も作る制作を考えられるようになったことです。
これまでは、そういうことを考えることが出来ないでいました。
つまり自分の中に、そういう余裕がなかったということが一番の原因です。
ですから、実のところ自分の人生や生活自体が、息抜きの時間や、休息や、余暇ということが、
これまで本当にびっくりするくらい上手に持てないでいました。
いつもかつかつでした。
作品にも生活にもそういう時間を、
積極的に上手に取り込むことを、意識するようになって来ました。
四つ目は、ですからいつも柔軟に柔らかく、
日々の出来事や現実の現象を自分の思い込みで見るのではなく、
自分を一旦手放して対応するようになって来ましたので、
作風もそういう方向に向かっているように思います。
自分ばかりがやっている気になるのではなく、人との関係で起きてくることや、
ヒントを貰って取り込んだり、何よりも人の力に頼るということではなくて、
人の力を信じられるようになったというような感じです。
五つ目は、これまでも「失敗のない制作」ということを言ってきましたが、
この言葉の奥深さを最近つとに考えるようになりました。
それは失敗しないように完璧を目指すという意味での「失敗がない」なのではなく、
私が目指すべきは、失敗を正直に失敗として向き合いながらも、
その失敗を自分の味方にすることで、
その失敗が失敗でなくなるということを制作の上で目指すということです。
ですから、失敗を隠すのではなく、失敗を正直に見せてもそれが活かされる制作を
もっと展開していきたいと思うようになって来ました。
制作の上で、まだまだ気づいていないことが沢山ありそうです。
こうしたことを一つ一つ噛みしめるようにして、
新たな展開に挑戦して行きたいと思っています。
在廊することで、いらした方々から、様々なヒントを頂き、
見る人と共に制作して行くことが重要と考えます。
今日もこのようにブログを書けますのも、
一重に個展を見に来て下さる方々が、様々な事を気づかせて下さるからです。
心から感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。
追伸:一昨日、長野県小川村在住の方から、新米コシヒカリの玄米を頂きました。
大変助かります。ありがとうございました。
また、本日横浜在住の方からお祝いとして、賛同ご寄付一口1万円を頂きました。
実は帰りの交通費の目処のないままに上京していました。
本当に助けられました。ありがとうございました。
また最後になりましたが、この度、早々と個展を見に来て下さった方々、
作品をお買い上げ下さった方々に心からお礼申し上げます。
今後の制作の大きな励みとなります。
ありがとうございます!
個展は26日までです。引き続きよろしくお願い致します。